お天気を読む力は、登山を続けていくなかで身につけたいことのひとつ。しかし天気図を読み、そこから予測できるようになるのは経験が必要で、簡単ではないのも事実。まずはいつも日常で見ているお天気予報から、少しだけチェックする項目を増やしたり、できることから始めてみてはどうでしょうか。
晴れ・曇り・雨以外を気にしてみよう
日々の天気予報では実際のところ「明日は晴れか雨か」を知るために見ているだけで、夏なら「明日は暑いか」、冬なら「明日は寒いか」が加わるくらいではないでしょうか。そこから一歩進んで、日常で以下のようなポイントを気にするくせをつけておくと、登山の時に役立ちます。
・雨量
天気予報といえば雨予報。いつもは降水確率を見ていると思いますが、一歩進んで降水量も気にしてみてください。1時間当たり1~3mmの雨であれば街中ではしっかり雨が降っている感覚で、レインウェアを着て山行が可能ですが、それ以上となると山行中止を判断します。この雨量でも長時間続けば危険ですが、例えば10mmともなれば水溜りや足元が崩れたり、沢沿いでは急な増水も起きます。 たったそれくらいでと驚くかもしれませんが、だからこそ、その感覚を知っておくと役に立ちます。数字によっては1時間あたりではなく24時間雨量ということもあるので、注意して見てください。
・気温
気温は何度かという数字と、それがどんな感じだったかの体感や服装を、毎日意識してみます。登山では標高が100m上がれば気温が0.6度下がるといわれています。山小屋では何度くらいだなとか、山頂では何度くらいだな、日中何度くらいなら歩くことを考えるとこんな服装でいいな、という計算ができるようになり、防寒や暑さ対策の服装準備に役立ちます。
・風速
日常生活では事前に風速を気にすることはほとんどないと思いますが、登山では雨天よりもやっかいかもしれません。風速が1m上がれば体感温度が1度下がります。風があると、実際は温度計の表示よりも寒く感じるというわけです。風速は10mあれば転倒や滑落に十分に注意が必要ですし、15m以上の風速が予測される場合は山行は中止、もしくは安全圏までと考えます。日常生活で風が強い日は「これは風速何mくらいかな」と気にして感覚を身につけると良いです。
例えば富士山は、5合目と山頂の標高差が約1,200mあります。それだけで気温差は12℃、11月頃の風速は20mを超えます。氷点下の中、立つのも苦労する状況の富士山頂は非常に危険な環境であることが分かります。
・雲(観天望気)
現地の雲や風の動きを見て今後の天候を予測する事を、観天望気といいます。雲が発達している場合や悪天を知らせる雲が発生している場合は、安全なルートへの変更、途中下山を検討します。日々の生活でもどんな雲が出ているか、その後にどんな変化があったかなどを気にしてみてください。
例えば大きなドーム状をした積乱雲は、夏の登山で最も判断しやすい雲のひとつです。直下では激しい雨や雷を伴う危険があります。積乱雲を小さくした状態の積雲があり、これが発達すると積乱雲になります。積雲を見た時点で気に留め、発達が確認されたら下山を検討するといった動きが可能になります。
悪天候でも対応できる力を身につけよう
登山を続けていれば、悪天候に見舞われることは避けられません。そのため、雨予報の時は山に登らない、と決めつけてしまうのも少しもったいない点もあります。天気を見ながら、余裕をもって大丈夫と思える範囲で経験を積んでみることもおすすめします。
・行き慣れた山に登る
何度も行き慣れた山であれば、視界不良に陥っても現在地の予測が容易で、麓までの距離も体で分かっているため不安が少なく、悪天候下でも精神的に安心です。また、予測より天候が悪化しても現地を把握しているので対策も立てやすいです。
・装備を使ってみる
晴れていればスニーカーでも行けるような山でも雨となれば状況は一変します。自分の持っているレインウェアや登山靴が十分機能するのか、小物などで不足がないかを確認したり、雨天での取り扱いにも慣れるためにも、悪天候下で実際に使ってみた方が良いと思います。
・パートナーと一緒に
悪天候下での単独登山は、何かあった時のリスクが非常に高まります。練習として出かけるとしても、場合によっては自身と同等かそれ以上の経験がある人に同行してもらうことも検討してください。
・キャンプ場で
悪天候下の登山の練習で宿泊となると、ハードルが更に高くなります。悪天候の中で宿泊してみたいときは、キャンプ場を利用すると良いでしょう。管理された環境の中なのでリスクが低く、雨や風のある中でのテント設営や食事の準備、撤収など、普段得られない経験が沢山あります。
まとめ
天気がわかるようになると登山が変わります。どうなるか分からない不安が和らぎ、自分なりに予測した行動ができるようになれば、より難しく登り甲斐のある山にも挑戦できるようになります。そして何より、これまで知らなかった自然の摂理を理解することで、登山がより充実し、濃厚なものになるのは間違いありません。日々の生活で無理せずできることから、ぜひ始めてみてください。