子どもが山登りに行きたいと言い出したら!? そんな時の親の心得

親子登山 登山ノウハウ

何を思ったか子どもが突然「山登りに行きたい」と言い始めたら。私の人生初登山は小学生の時でした。親に連れられて行ったわけでもなく、私のひと声から始まったのです。しかも両親は登山未経験。そんな子ども心にまつわる体験談と、逆に、そんな子どもを連れての登山に親としてどう臨めば良いか、私の例をご紹介します。

唐突に「登りたい」子ども心

遡ることウン十年前、小学五年生になってしばらく経った5月のある日。10歳ちょっとの私が、突如両親に「山登りに行きたい」と言い出しました。

親曰く、当時は「あまりにいきなりのことでびっくりした」そう。それもそのはず、私は普段はどちらかというと家で漫画などを読んでいる方が好きなインドア少年だったのです。私自身も、どうして突然経験したこともない登山に惹かれたのかはっきりと覚えているわけではないのですが、行楽シーズンでハイキングに興じている家族の様子をテレビで見た記憶があるので、引き金はそこにあったのかもしれません。

ただ、インドア少年であっても「興味を持ったからやってみたい」というだけで、そこに何故とか理由はなく、それが登山であることにそこまで大きな意味もありません。子どもがゲームをしたい、と言い出す理由は面白そうだから、というだけであるのと同じです。

すんなりOKしてくれた両親

くじゅう
出典:おおいた風景写真集 | 大分県観光情報公式サイト

そんな私を連れての登山デビューに両親が選んだのは大分県の九重(くじゅう)連山。九州本土で最も高い中岳(1,791m)を有し、私たちが住んでいる福岡から登山口まで車で約2時間とアクセスも良いことから、九州の人気登山スポットとなっています。

ちなみに九重連山は、玖珠郡九重(ここのえ)町から竹田市久住(くじゅう)町にかけて連なります。火山群や地域全体を「九重山」または「九重連山」、その中に「中岳」や「久住山」など多数の峰々があります。近年では混同を避けるために一帯に「くじゅう」を用いることも多くなっています。

人気の山とはいえ、九州本土の最高峰を擁する立派な連山。自分のことだけ気にしていればいい、当時子どもの私とは異なり、親心には少なからず「長年登山なんてろくにしていないのに、子どもを連れて登るなんて大丈夫だろうか」という思いはあったはずです。しかも二歳下の妹も従えて歩かなければいけません。

それでも、登山に行くことを渋られたり断られたりした記憶はありません。ありがたいことです。日曜大工が趣味の父と、学生時代は一人旅にも出ていたという母。一般的な40代と比較して体力はあったほうなのだと思います。

周辺には飯田(はんだ)高原や久住高原などの草原が広がっており、また九州らしく温泉も広範囲に湧出しています。下山後に温泉にも入ったので、あえて中岳を擁する九重連山に挑戦した決め手は、温泉目当てもあったかもしれません。

全て順調でごきげんの私

くじゅう 坊がつる
出典:おおいた風景写真集 | 大分県観光情報公式サイト

よく晴れた、絶好の登山日和。父の運転する車で登山口の牧ノ戸峠まで向かいます。駐車場の脇で家族揃って入念な準備体操、登山口に登山計画書のポストなるものがあることも初めて知りつつ、まずは久住山を目指していざ出発!

10歳そこらの活発な年頃の男子、まして普段は家に籠もっているだけあって体力は有り余っている。それに実家の周辺の田園風景とはまた違う自然の中を歩く非日常感となれば、最初から足取りも軽くなります。

私の携行品は首元にタオルとリュックに水筒と軽食、それにカセットプレイヤーと、お小遣いを貯めて買ったばかりのカメラ。カセットプレイヤーにフィルムカメラというのが昭和を感じますが、草の息吹や鳥の声を聞くこともせず、お気に入りの(今でいう)Jポップなど聴きながら意気揚々と足を進めました。今考えればいささか無粋でもったいないことをしていますが、当時の自分にとってはイケてるオレ、です。

かたや、息子の気まぐれに巻き込まれたともいえる両親。大人しく引っ込み思案な長男坊が、突然アクティブな提案をしてきたこと自体は、親心としては驚きつつも正直嬉しかったと思いますが、先のとおり肝心の登山の経験はほとんどなかったはずです。運動らしい運動も普段はしているようには見えませんでした。

「初めから飛ばしすぎると途中でバテる」というのは通説ですが、そんなことは子どもの自分は理解できません。さらに先に言えば、最後までバテることはなく、実はその説は通用しなかったのです。子どもの「無鉄砲」「無邪気」「向こう見ず」がそのまま勝ってしまいました。

ふと気付けば、最初は同じ歩調で歩いていたはずの両親が前にいない。後ろにもついて来ない。イヤホンから聴こえる小沢健二の曲に足取りを合わせていて、夢中になってしまっていました。そういえば、「ちょっと先に行ってるよ」「あまり急ぐなよ」というやりとりを父としたような気がします。いや、したかも。したっけな?

今と違い、スマホどころか携帯電話もない時代。不安で泣いてもおかしくない場面です。ところがその時の自分はなぜか強かった。「ペースを落として歩いていれば、この先に分かれ道でもない限り、はぐれることはないだろう」と考えたのです。親からするとすでにはぐれている訳ですが、その自覚はなく立ち止まるでも引き返すでもなく、速度は落とせど目指すは変わらず九住山の山頂です。

親の心子知らず、登山は大詰めへ

くじゅう
出典:写真AC

親の不安はいかばかりだったでしょうか。

子どもだし、気づいたら待っているだろうと普通は思うかもしれませんが、気づいても待たないという選択肢があるのです。また、いつもの性格からは想定できない、思いがけない行動にでることもあるのです。

前方へ消えた息子に追いつこうと、焦っていたかもしれません。いや、先に進んでいると思いきやコースを外れて迷子になっている可能性も考えなくてはいけない。林道を出たら足場も悪くなるしケガや滑落も気にかかる。気持ちははやりますが、兄の突拍子もない発案に付き合わされた妹も連れて歩かないといけません。

大人になった今は、それはそれは大変な状況であっただろうとも想像できますが、当時の私はそんなことはつゆほども思いません。登山というものの爽やかな心地良さにすっかり浸ってしまっていました。山頂へ大詰めという辺りまできて後ろを見渡すと、ようやく遠く斜め下の方に両親が歩いてきているのが見えました。小学生の自分ひとりの足と感覚でここまで歩いてきてやったぞという誇らしさと達成感で、私の顔には憎らしいほど自然に笑みが溢れていました。

両親とも合流し、山頂へはあとひと息。眺めのよい黄土色の山肌を登り歩き、ついに久住山登頂!新調したカメラのパノラマモードで記念撮影です。せっかくなのでもうひと頑張り、お隣に見える九州本土の最高峰である中岳へ。途中にあるターコイズブルーが美しい御池の縁を周り、こちらも無事登頂!もちろんご自慢のカメラでここでもパシャリ。

下山も登りと同じように両親を置いてぶっちぎりの独走で、初めての登山は終わりました。両親は身も心も疲れ果てたことと思います。

まとめ:親子登山はペースが合わないもの

親子登山
出典:写真AC

子を持つような歳になってようやく、親としての子連れ登山は「ただ登るものではない」ことに気付かされます。 あの時は無事に合流できましたが、目の届かないところで子どもがどんなアクシデントに見舞われるかもしれません。

子どもに「山は危険だ」といくら言って聞かせても素直に従ってくれるものではありません。ただ実体験として初めての登山は、心地よい風、綺麗な草原、気持ちよい汗、今でもその感覚が思い出せるくらい、どれも感動するものでした。子ども心にはそれが足取りを不用意に軽くさせた。危険な目にあわずに済んでよかった、と思います。いま私があの時の親の立場だったとしたら、どうするべきだったのでしょうか。

あくまで自主性に任せて先に進ませるか? それだと迷子や事故が心配。

叱って一緒に歩くよう言い聞かせるか? それでは子どもの自由を制限することになってしまう。

いま私が親の身となって親子登山をするとすれば、子どもには「先に行きたいのであれば、家族のリーダーになりなさい」と伝えると思います。リーダーは先頭を歩いてもいいが、お父さんたちがついて来ているかどうかもしっかり確認すること。後ろに見えなくなったら立ち止まること。お父さんたちもリーダーを見ながら注意して歩くから、それが約束できるなら先を歩いていい、と。

親が発案での親子登山であれば、恐らく私のケースとは逆で、子どもの足取りが重くなる、なかなか進まない、という状況になることも多いと思います。そんな時に怒ったりせかしたりして言うことを聞かせるのは、果たしていい親子登山なのかは疑問です。前述のように例えば子どもを前に行かせたとして、その子から「お父さんなんで遅いの、もっと早く歩いてよ」と何度も怒られたりせかされ続けたとしたら、楽しいでしょうか。

いずれにしても、大人と子どもではペースは違うのが当たり前です。そこで大人がストレスに思ったり怒ったりするのではなく、子どもが先を行く姿(あるいはついてくる姿)を目の届く位置にしっかり置き、その範囲内で自主性を持って歩いてもらうことが、わんぱくな年頃の子どもとの、無理のない山の歩き方なのかなと思います。

この記事を書いたひと
楽市びゅう

普段はインドア派のライター。山は小学生の頃に家族で登る程度でしたが、就職して間もなく上司に誘われ富士山に登頂。以来、もっぱら人に誘ってもらう派で登山を楽しんでいます。モットーは「安全第一」です。

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