いよいよテント泊に挑戦!となったら、準備するものも増えるし、考えることも増えます。そのため、日帰り登山のように思いたってすぐ出発というわけにはいきません。まずはテント泊についての大まかな全体像を把握して、イメージをふくらませながら、アイテムを揃えたり計画を立てたり、少しずつ準備を進めてみませんか。
登山用テントを準備する
まずはテントがないと始まりません。購入するか、レンタルにするか。いずれにしてもテント泊には仲間と行くのか、ソロで行くのか、頻度を考えてサイズの検討をします。構造としてはシングルウォールとダブルウォールがあります。
◆ サイズの考え方
もし購入する場合は、テント泊に一緒に行く人数と頻度で考えた方が良いです。いつも一緒に登山している仲間でも、テント泊はしないというメンバーもいますし、既に持っている、もしくは購入しようとしている場合もあります。2-3人用を購入したものの、結局ひとりで使うことが多くなることもあり、大は小を兼ねますが、サイズが大きいほど当然ながら重くなります。
◆ シングルウォールとダブルウォール
シングルウォール方式は 防水透湿機能に優れた本体のみで、1枚構造でも雨風を防げること、そして重量が軽いのも特長です。但し結露しやすく、覆いがないため雨天時の出入りでは中まで濡れやすく、取り扱いに慣れやコツが必要です。
ダブルウォール方式は、本体+フライシートと呼ばれる防水用のカバーを使用します。本体を上から覆うことで、入口に前室と呼ばれる屋根つき空間を作りだすことができ、雨風をしのげる登山靴置き場や炊事場として活用できます。さらにシングルウォールと比較して、外気温や結露に影響されにくいです。
◆ 最初のイチオシは「エアライズ1」(1~2人用/アライテント)
山岳ソロテントの代表格。冬季を除いた3シーズンを基本仕様としますが、テントオプションを利用したり、行先や時期によっては冬でも使用している方は多いです。軽量でシンプル、設営も簡単。初めてでも扱いやすいうえに長年愛用している人も多い人気シリーズで、サイズも各種あります。
テント泊装備の初期費用はかなり高額になりますので、本当に続けるかどうか一度しっかり考えてから購入を検討するのもいいかもしれません。また、最初はレンタルを活用するという方法もあります。
テント以外で必要なもの
◆ 寝袋・マット
寝袋は基本的に春・夏・秋の3シーズンタイプで十分に対応できると思います。冬山用は別として考えた方が良いです。マットについて最初は重要性がわかりにくく軽視しがちですが、地面に接する面からどんどん熱が奪われるため、山中での防寒対策に必須です。使用時に空気を入れて膨らますエアマットタイプと、昔ながらの折りたたみ式や丸めるタイプのウレタンマット・銀マットがあります。エアマットはコンパクトに収納できますが、そのぶん値段がやや高めです。
◆ 調理器具
山小屋と違ってテント泊となると自炊が基本となりますので、ガス、バーナー、コッヘル(鍋)の3点が必要です。凝った調理はしなくてもお湯を沸かすことさえできれば、レトルト食品を活用して温かいものを食べることができ、快適に過ごせます。
◆ 防寒着・小物
高山では夏でも朝晩は冷えることが多く、一桁気温も珍しくありません。特に風の強い日は体感気温もぐっと下がるので、トイレに行くのも一苦労ですし、山小屋のように部屋に戻ればすぐ温まるということもありません。ダウン系のジャケットやあたたかいインナー、手袋、靴下があると安心です。テント泊は山小屋泊よりも寒さ対策がとても重要といえます。
重くなる荷物への対策
日帰り登山や山小屋泊とは大きく異なるところが、何といってもザックの中身とその重さです。テントだけなら1~2kgのプラスですが、寝袋、マットも必須です。もちろん食事や水も自分で用意する必要があるので、少なくとも10kg以上の重さが身体にのしかかります。
◆ 軽量化のポイントは食事
軽量化は、テント泊登山者にとっては命題。荷物の軽量化を行う上でカギになるのは、やはり水と食事です。登山中の普段の水分摂取量と水場の位置を確認しておき、この区間ではどれだけの水を持ち運ぶ必要があるのか、水の補給ができる場所とタイミングを考えて計画することが大事です。
食事はお湯だけで食べられて軽量なドライフーズやレトルトを中心にしたり、夕食以外はエナジーバーやチョコレート類など腹持ちが良く、コンパクトに運べるものを活用するなどの方法があります。
◆ 体力不足なら行先選びでカバー
テント泊で重い荷物を背負っての登山は、想像以上の筋力と体力を使います。マラソンなどをしているからと体力に自信がある人でも、重量に対する耐性はまた別ものなので、コースタイム通りでの行動は厳しいと考えておいた方が良いです。
最初はコースタイムが短く高低差も少ない余裕のある山を選んで、安全に楽しめる範囲での挑戦をおすすめします。事前に日帰り登山の荷物を重くして、テント泊登山のシミュレーションをしてみるのも効果的です。
テント場での流れとマナー
テント泊というのは、山に登って自分の好きな場所で自由にテントを張れることではありません。登山地図に記載してある幕営地、テント場として定められている場所のみとなります。山小屋の近くには必ずテント場があると思われがちですが、意外とテント設置が許されている場所は少ないのです。テント場の近くに水場がないという場合もありますので、事前の情報収集と計画が重要です。
また、慣れないうちは特に「明るいうちに到着する」というスケジュールではなく、できるだけ「明るいうちに食事まで終わらせる」というスケジュールで計画しておくのも大事です。到着が遅れるなど何かハプニングがあってもそれなら対応できます。暗くなった後はゆっくり過ごして寝るだけ、という状態にしておくことで体力的にも精神的にも余裕をもつことができます。
◆ テント場到着後の一般的な流れ(山小屋近くの場合)
- 目的地に到着したら、山小屋で事前受付や支払いを済ませます。ここで水場、トイレ、自炊場の有無や利用ルールなど施設の確認をします。
- 決められた区域内で、できるだけ平らな場所を選びテントを張ります。混雑時はスペースをとりすぎないように配慮が必要です。周囲の方と顔を合わせたら挨拶を忘れずに。
- テントを張ったら寝袋・マットを広げ、寒くなる前に着替えたり、防寒対策を済ませてから外へ出ます。
- 水場で調理に使う分の水を先に確保して、できるだけ明るいうちに食事まで済ませます。
- テント内の声は外にも聞こえますので、暗くなったら声のトーンは落として、20時~21時頃には就寝します。
- 翌朝は、出発予定時間に遅れないように、食事と撤収の時間にしっかり余裕をみて行動を開始します。事前に受付や支払を済ませているので、特に山小屋に行くことはなくそれぞれが好きなタイミングで出発できます。
まとめ
テント泊未経験者にとって、テント泊登山は準備も当日もわからないことだらけ。装備の初期費用も結構かさむので、初心者はためらいがちになります。まずはレンタル品でチャレンジや、登山仲間のテントを間借したりするのもひとつの手です。百聞は一見に如かず、とりあえず一度経験してみてください。テントからきれいな星空を見上げながら、自然の醍醐味を直に感じてみてはいかがでしょうか。