映画『180°SOUTH』パタゴニアに行かずにはいられなかった

パタゴニア ちょっと休憩

【推し企画】山歩みちライターと編集部が、自分の好きな登山に関する「推し」映画や本などについて個人的な想いのみで語っていきます!

『180°SOUTH(ワンエイティ・サウス)』あらすじ

1968年、若きアメリカ人青年イヴォン・シュイナードと親友のダグラス・トンプキンスは、サーフ&マウンテンの楽園を探して南米パタゴニアへ向かう。その後の人生を大きく変えた旅の全容を、二人は持参した16ミリカメラに記録していた。それから40年後、その旅の記録映像に魅了された青年ジェフ・ジョンソンが、彼らの足跡をたどって旅に出る。

引用:シネマトゥデイ

コロンビア滞在中に映画と出会う

私がこの映画と出会ったのは、仕事の関係で2年弱コロンビアに滞在していた時でした。南米を旅している友達とパタゴニアの話になり、山が好きなら見た方がいいよと勧められたのがきっかけです。

84分と短いドキュメンタリー映画で、2011年に日本でも公開されています。監督がサーファーということもあり、内容はサーフィンと登山をメインに描かれ、ある若者二人の旅の軌跡を追っていく中で出会った人にインタビューをしながら、最後は環境問題に迫るものでした。

冒頭にイースター島から南米大陸に行く映像がメインに流れ、登山のドキュメンタリーと聞いていたのにちょっと違うぞと感じたのも束の間、その後に続いたパタゴニアの山々の映像の美しさに驚き、思いがけず一気に心を奪われてしまったのです。

その若者は二大アウトドアブランドの創業者

パタゴニア

「知らないところへ行ってみたい」と、アメリカから二人の青年がパタゴニアへ旅立ちました。その二人こそが、パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナード と、ザ・ノースフェイスの創業者ダグラス・トンプキンス。

この映画は現代の若者ジェフが、昔の若者二人の旅をたどるドキュメンタリー。その道のりは簡単ではなく、イースター島からチリに渡る際にはヨットのマストが折れたり、登山中には道に迷ったり、体調不良で下山しなければならなくなるなど、様々なトラブルを乗り越えながらパタゴニアを目指す映像が収められています。

過酷な旅ですが、南米・パタゴニアのそこにしかない風景と、未知なる世界の冒険は、昔と今の三人の若者をすっかり魅了してしまったのです。そしてその映像に見事に心を奪われた私も同様に。

イヴォンとダグラスは、このような言葉を残しています。

“ 手付かずの自然に慣れ親しんでいるものは美の感覚が魂に刻み込まれている ”

“ 旅に出よう。きっと新たな豊かさを教えてくれるから ”

その後二人は、それぞれが今や世界的なアウトドアブランドを立ち上げ、自然保護活動にも力を入れています。現在までにダグラスは南米における5つの新たな国立公園の設立に尽力し、イヴォンはパタゴニアの売上の1%を毎年世界中の環境団体に寄付し続けています。

映画を観た1ヶ月後にはパタゴニアへ

映画を観た後すぐに、いてもたってもいられず、パタゴニアに行こうと決意。幸いコロンビアからパタゴニアは近く、映画を観た1ヶ月後にはパタゴニアの地を踏んでいました。ひとりではなく、仲間との旅です。

“ パタゴニア ”とひとことで言いますが、実際は南米大陸の南緯40度付近を流れるコロラド川以南地域の総称であり、チリとアルゼンチンにまたがっています。映画で描かれたチリ側を巡りたかったのですが、情勢悪化のため危険と判断して、アルゼンチン側を訪れました。

パタゴニアには約30の国立公園があり、希少な動植物、切り立った山岳地帯、氷河など、雄大な自然が手つかずに残っているため、自然を愛する世界中の旅人の憧れの地となっています。チリ側にはパイネ国立公園やコルコバード山、アルゼンチン側にはフィッツロイ山や最南端の町ウシュアイア、ロスグラシアレス国立公園などがあります。

よりパタゴニアの自然を感じることができると友達に勧められ、多くの名所がある中で、フィッツロイに行くことを決めました。フィッツロイと聞いても知らない方が多いと思いますが、アウトドアブランドのパタゴニアのロゴのモチーフとなっている山です。パタゴニア特有の切り立った山のフォルムが印象的なのはもちろん、天気がいい日は朝陽に照らされた山肌が燃えるように赤くなり、パタゴニアの代表的な山となっています。

パタゴニア
出典:amazon

トラブルもあったフィッツロイへの道

パタゴニア

フィッツロイは標高3405m、山頂に行くためにはクライミング技術が必要となります。そのため、拠点となっている町エルチャルテンから出発し、テント場で一泊して山頂直下にあるロストレス湖まで行き、朝焼けのフィッツロイを見るコースが一般的です。

私達もそのコースを選び、エルチャルテンで寝袋やテント、クッカーなどを借りて出発する予定でしたが、なんとテントがすべて貸出中で借りることができないという事態に。私が登山計画を立てたこともあってかなり焦り、何件もレンタル屋を回り、出発する時間を遅らせギリギリまで探しましたが結局手に入れることはできず、寝袋とクッカーだけを借ることになってしまいました。

しかし映画の中でも、パタゴニアでトラブルはありましたし、登山を断念するシーンもありました。行く道のりが困難であるほど、それを越えた先に見える景色から感じるものは大きいことを、既に映画から学んでいたのです。私たちも雨が降らないことを祈りつつ、テントなしで出発することにしました。

登山道はしっかりと整備されていて、フィッツロイが常に見えるので、歩いていても飽きません。登山道の途中には青色の氷河や湖畔があり、映画のような美しい景色が広がっていました。何度も足を止め写真を撮ったり、ゆっくりと話をしたり、励ましあったり、時にはもめたりしながら、仲間と共に足を進めました。

燃える山肌に心が震えた

パタゴニア

出発前の情報では雲が出るとのことでしたが、雨も降らず雲もなく、翌朝も絶好の登山日和となりました。早朝まだ日が昇る前に出発し、ガレ場の急登を登り目的地であるロストレス湖へ向かいます。1時間程度で到着する頃には東の空が白んできて、わくわくが止まりません。さらに寒い中待つこと1時間、ついに念願の朝焼けのフィッツロイが現れました。

映画を観たのはほんの1ヶ月前なのに、その映画の影響で、今このフィッツロイに自分がいる。ひとりではなかなかすぐに決断することができない私ですが、こんなに早く現実にこの地に立てたのは、行きたいという気持ちに突き動かされたのと、もうひとつは一緒に来てくれた仲間がいたからでした。

そして、徐々に濃く赤く染まっていくフィッツロイを見ながら、ここまでの道のりを思い出しつつ仲間と歓喜の声を上げました。

まとめ:旅で得られる心の豊かさ

パタゴニア

” 旅に出よう。きっと新たな豊かさを教えてくれるから ”

映画でこの言葉を聞いて“ 新たな豊かさ ”とはいったい何なのだろうと考えさせられました。

フィッツロイへの道中に歩きながら話したくだらない話、重い食材を運んで一緒に作って食べた夕食、ふとした時の優しさなどから、私は仲間と旅する楽しさを知りました。言葉の壁や、ちょっとしたトラブルを協力しながら解決していくことで、人間としての成長も感じました。この旅に出なかったらきっと知ることも感じることもなかったでしょう。つまり、旅が教えてくれるのは心の豊かさではないかと思うのです。視野が広がり、心が柔らかくなり、自分に変化が起きる。

この映画の主人公も、そして創業者の二人も全員がそれぞれ旅で感じたものがあり、その後の創業や環境保護活動につながっています。旅に出て感じることは、人によってさまざまです。最近では若者が旅に出ないという話もあります。もっと旅をして、自分なりの新しい豊かさを感じて欲しいと思います。

「推し企画」に参加したい!自分の好きな登山の「推し」について熱く語りたい!という方は、ぜひ編集部までメールにてご連絡ください。お待ちしております。

sanpomichi@field-mt.com

この記事を書いたひと
once11

大学卒業後に山小屋で働き、山の魅力に取りつかれました。南アルプス南部の赤石岳や荒川三山などをメインに、ときどき北アルプスや八ヶ岳へ。ソロでもパーティーでもテント泊でも山小屋泊でもなんでも活動中。

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