私が初めて登山を始めたのは初秋でした。冬になれば山は雪が積もることもあるし、初心者は冬の登山はお休みだと漠然と思っていました。今のうちにいっぱい登らないと冬は行けないから…と登山仲間に話したら「冬も登れるよ。いきなり雪山に行かないで低山なら大丈夫。」と言ってもらえて胸が踊った記憶があります。実は冬の低山には魅力がいっぱいなのです。
私が考える冬の低山の魅力はこの3つ
1)空気が澄んで景色が綺麗に見える!
この時期は空気が乾燥して湿気が少なく、大気が安定していることが理由で空気が澄んでとても綺麗に山々の景色や眺望を楽しむことができます。低山なら、街の景色も綺麗に見えるところも多いです。
2)虫がいない!
刺されやすい体質の私にとって、最も魅力だと思うことです。刺されたくない蜂や蚊やアブ…。四年前、四国の石鎚山登山で何十か所もアブに刺されて悲惨な目にあったことが忘れられません。どれだけ虫除けスプレーをしても、服の上からたくさん刺されました。冬はそのような煩わしさがなく、落ち葉がたくさん積もったふかふかの山道を歩くことができます。
3)暑くなく意外に歩きやすい!
ピンと張った空気感と、本来なら冷たいと感じる風が、歩いて温まった体には実は気持ち良いものです。バテてしまう要因のひとつに水分不足や暑さがありますが、夏は暑くて歩くのが大変な低山でも冬こそ狙い時。上着をこまめに脱いだり着たり、うまく体温調整して歩くとクールダウンがしやすく歩きやすくなります。
初心者が気をつけたい冬の低山歩きのポイント
雪がない低山を狙って行ったとしても、山の雰囲気は夏とはちょっと違います。何が違うのかを先にイメージしておけば現地で焦ることはありませんので、頭において計画をたてると良いと思います。
日照時間が短いので十分なコースタイムをとる
まだ日が沈まない15時頃でも、東側の山の斜面は驚くほど暗く感じます。私はとても怖がりで心配性なので、コースタイム+休憩タイム1.5時間+アクシデント用1時間で考えます。アクシデント用というのはルート間違いや道迷いなどで時間をロスした時のためのバッファです。
そして15時下山で逆算し、遅くても何時に出発するかを計算します。あくまで私の考え方ですが、登山開始時間は早ければ早いほうが良いと思っています。冬は日照時間が短いので特に余裕をもって、十分なコースタイムを計算することがとっても大切です。
人が少ないので経験者と行くか、行ったことのある山を選ぶ
私が登山を始めた時は、秋の六甲山(兵庫県)でたくさんの登山客で賑わっていました。けれども冬になると登山者はぐっと減ります。特に平日だと誰ともすれ違わなかったということも。低山といっても、気候が変化するかもしれませんし、何よりも冬は日が暮れるのが早いです。
冬に限ったことではないですが、なるべく最初はひとりではなく、経験者と一緒に歩くほうが良いです。ただ、周りに登山仲間がいないという方も多いと思いますので、その場合特に冬に登るのなら、一度行ったことのある山を選べば安心感が違うと思います。
初心者の冬の基本装備+あるとよいもの
「登山靴」「ザック」「レインウェア」。この登山の三種の神器は最初に揃えましたが、登山の先輩からずっと言われ続けたことは「特に初心者は装備で守られている」ということ。 適当なもので間に合わせるといざという時に痛い目にあいます。
基本装備:特にレインウェアは登山向けのものを
特に冬は気候が急に変化すると、寒さがとても不安になります。以前、今日は予報で終日晴れだからレインウェアは置いてきたという友人がいて、驚いたことがあります。無情にも登山中に急な雨が降ってきて友人はずぶ濡れになってしまいました。冬ではなく初夏だったので良かったのですが、これが冬だったら…と思うと低体温症などリスクが増えて大変危険です。
カッパのような街で着るレインコートだと防水性はあっても透湿性がないので、汗がこもり体が汗で冷やされ体力を消耗します。さらにポンチョタイプは風にあおられやすいです。登山ショップで扱っているゴアテックス素材のレインウェアなどなら表面の水分は通さず、内部の水蒸気は外部に排出するので、多少しっかり歩いても快適ですし、そして風を通さないのでウィンドブレーカーにもなります。
経験や知識を積んで装備を簡易化していくことは良いですが、レインウェアは必須です。最初はきちんと装備を備え、特に冬の季節はリスクが増えると思って歩きたいものです。
基本装備:防寒ウェアと小物を追加
三種の神器はもちろんのこと、服装にも気をつけておきたいポイントがあります。防寒対策は、厚くてあったかいものをひとつ着るのではなく、脱ぎ着がしやすい薄手のものを重ねること。汗をかかない状態をキープするために、歩いて暑くなったらすぐに脱げること、そして休憩時には身体を冷やさないようにすぐに着られることが大事なのです。コンパクトにたためるダウンウェアは軽くてかさばらないので、一枚持っておくと安心です。
そして手袋(グローブ)、ニット帽、ネックウォーマーなどの小物も忘れずに。私は冷え性なので、極寒の時は風を通さないタイプのグローブの下にウールの手袋をはめる時もあります。
なくしやすい「手袋」はポケットより上着の中へ!
手袋は外したりつけたりする機会が多いため、実は最もなくしやすいアイテム。冬になくした時のダメージは大きいので、かさばらないものでも常に予備を一枚ザックに入れておくと安心。
休憩時など外す時は、上着のポケットより前見頃のジッパーを開けてふところに入れるのがおすすめ。ポケットは浅かったり、また他のものを出し入れすることもあるので、実は落ちやすいという難点があるのです!
あるとよいもの:ストックと簡易アイゼン
雪が積もっていない低山でも、登山道の凍結や、霜が降りていることもあります。ストック(トレッキングポール)があると第二の足となり、バランスを取って歩きやすくなります。ストックは冬以外のオールシーズン、下りが長い山や階段が多い場所などでも活躍しますので、もし持っていないようならこの機会に用意してはいかがでしょうか。
また、思いがけず凍結していた時のために、簡易アイゼンがあると非常に安心。私はお守り的に冬の低山でいつも持ち歩いています。急な下りが続く山道を滑らないように気を付けて降りる行為はとても疲れます。簡易アイゼンはいろいろ市販されていますが、私は6本爪のアジャスター式のアイゼンを愛用しています。ゴムのベルトで着脱がしやすいです。
冬の低山では体が温まるドリンクや食べ物を
水以外に、何かひとつ、温かいものを持参すると休憩時に体をぐっと温めることができます。私は温かい飲み物を保温ポットに入れて持ち歩いています。さらにバーナーを用意すれば、ラーメンやお鍋など、温かい山ごはんも可能に。楽しみはどんどん広がります!
コーヒー、紅茶、ホットレモン… 家で保温ポットに入れていけば直接手軽にすぐ飲むことができますし、お湯だけを入れてスティックタイプの各種ドリンクとコップを持って行けば、その時の気分で好きなものを飲むこともできます。
まとめ
初心者でも少し注意して登れば、冬の低山では澄み切った空気の中で綺麗な景色を思う存分楽しめます。冬に登らないなんて、もったいないです。冬こそ山での温かいごはんや、下山後に温泉をつけてさらに楽しみを増やしたり。
私は体力を落さないためにも、冬も登って近郊の雪山に登ることを目標にしました。春や秋に歩いた山も、冬は別の顔で迎えてくれます。最初は不安かもしれませんが、季節を変えてこの冬、ぜひ歩いてみてください。