子供を富士山に登らせる前に親が考えておきたい3つのこと

登山ノウハウ
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いつかは子供を富士山に登らせたい!試練を乗り越える強い力を身につけさせたい!と考えているお父さん、お母さんにお伝えしたい。子供の富士登山には、富士登山攻略本やマニュアル本には書いていない、でも何より大事な準備があるのだということを。これまで親子登山や子供だけの富士登山ツアーにスタッフとして同行して、現場で見たこと感じたことをお伝えします。

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子供を富士山に登らせる目的と手段を考える

富士登山はだいたい小学生以上が対象となります。子供を富士山に登らせるイコール「家族だけで登る」計画を立てる方が多いと思いますが、実は他にも「家族で富士登山ツアーに参加する」「子供だけの富士登山ツアーに参加させる」という手段があります。学校行事として登る中学校・高校も全国には多数あります。

そう、必ずしも家族だけで登る必要はないのです。むしろ深く考えずに家族だけで登ってしまったがために、ペース配分など何もわからず結局登頂できなかった、なんて悲劇も。

また、子供の試練として富士登山をさせたいのか、それとも家族で登山を始めるきっかけにしたいのか、という目的によっては、そもそも富士山であるべきか、ということにもなります。

家族で登山を始めるきっかけなのであれば「初めての登山が富士山」は避けた方がいいと私は思います。だって、森の中を抜けて、気持ちのいい稜線を歩いて、料理のおいしいステキな山小屋に泊まって、という登山の方が普通は楽しいです。なぜそんな楽しみを教えずにいきなり富士山に連れて行こうとするのか。日本一の山だから、といっても最初にチャレンジする理由にはならず。

登山って気持ちがいいものだ、楽しいものだと思わせてからの、いつかは富士山に登りたいと自分で言い出す流れを作るのがいいのではないでしょうか。もともと仲良し家族で、富士登山しようと言い出した途端にみんなで一致団結して頑張ろう!なんてムードなら全く問題ありません。ただそこまでの自信がないなら、目的と手段を改めて考えてみてはと思います。

親も一緒に行くのかどうかを考える

では、最も多いであろう「子供の試練のため・家族だけで登る」を選んだとします。子供を連れて行くということは、親がリーダー。登山のリーダーは経験、体力、判断力が必要となり、メンバーはリーダーの判断に従うのが基本です。

その認識と覚悟もなく、家族旅行のつもりだと超危険フラグ。「お父さんがリーダーだから、お母さんが疲れたら荷物持ってね」「お母さんが勝手に決めたからお父さんはわからないよ」なんて片方に頼りきるのはアウトです。休日のショッピングモールに行くのとは全然違います。視界の悪い風雨の中で傘もささず、標高3000mの場所で寒くてガタガタ震えながら、家族だけで必死に歩く、という可能性もあるんです。

親がブレーキになってしまう可能性

例えば4人家族。お母さんが疲れ果て、グズりだした妹と一緒にリタイア希望。兄は元気でやる気満々、ということもありえます。山頂まであと何時間かかるかもわかりません。途中で天候が変わるかもしれません。

ツアー登山の場合はガイドさんが判断してその後の指示もしてくれますし、まず他の参加者がいる手前、実は親も頑張れたりします。よく「ツアーだと他の参加者に迷惑がかかる」と思っている方も多いのですが、むしろ家族だけの方が甘えが出て大変。これ絶対。

「私はいいからお兄ちゃんを連れて行って」とお母さんはリタイアを決め込み。逆に自分も疲労で気力がなくなったお父さんが「いやここでみんなで下りよう」と助けるふりの偽善者発言。本音と建前が入り乱れた押し問答で、見ているのが苦しいほどに殺伐としています。

じゃあ4人で下山しようとすると、今度は元気な兄に不満が残る。行きたい行きたい頂上まで登りたいと言いますが、それは当然の主張。そこを「家族なんだから!お母さんを残して行けないでしょ!」と叱るのは、正当なようで全然違うのではと感じるのです。チームのために登頂を諦めることも含めて試練だと、お父さんがいきなりここで持ち出すのは勝手すぎる。

そもそも、何のための富士登山だったのか。何しに来たんですか、と。

試練を乗り越えて登頂することで、子供に強い力を身につけさせたかったのではないか。もしそれを最優先としていたのならば、夫婦とも頂上まで頑張る覚悟と準備はしてきたのか。体力のないお母さんは来ないという選択肢も含めて考えたのか。それで来ると決めたのなら、万が一リタイアとなった場合はどうするかという相談をしてきたのか。などなど。。

子供には頑張れと言いながら、親は「行けるところまで行く」なんて甘い気持ちだったりして、途中どころか最初からもうブレーキを引いてる。。。ちょっとそこんとこどう考えてきたんですかと、登山道で嫌なムードになってる家族を見かけるたびに、間に入りたい気分でした。

子供が甘えてしまう可能性

もうひとつ、親と一緒だと子供が甘えてしまう問題もあります。そしてグズりだす時は親も疲れている頃。大人の理屈でしかもキツイ言い方で上から押さえつけてしまい、イメージしていた家族登山とはほど遠い険悪ムードになってしまいます。怖い怖い。登頂できても手放しで喜べない空気。

もし可能であれば、子供だけのツアーに参加させたいところですが、あまり数がないのが難点。 親がいなければ甘える相手もいないし、周囲の元気な子の雰囲気に引っ張られて何だか気が紛れているように思います。年上の子が年下の子を気遣ってあげたり、子供たちの潜在力が発揮されるような。

親がリーダーになれそうにないなら、家族で富士登山ツアーに参加するのがいいのではないでしょうか。リーダー役はガイドさんが担ってくれるので判断はお任せして、登山中は親も保護者という立場ではなく子供のチームメイト。ガイドさんをリーダーとして子供と対等になる方が、実はうまくバランスが取れるのではないかと思うのです。

子供本人に登る気があるかどうかを考える

ここでは、子供だけの富士登山ツアーへ参加している子供たちの例を。

年齢は小学校低学年~中学生。彼らの参加の動機は、大きくふたつに分かれます。本人が登りたくて参加している子と、親が登らせたくて参加させられた子。

登りたい子の中には、親から話を聞くうちに登りたいと思った子もいますし、テレビなどの影響で自分から登りたいと言い出し親が慌てる、というパターンもあるようです。いずれにしても本人が登りたいなら何があっても成功。登れたら嬉しいし、登れなかったら悔しいし、楽々登ったとしても、辛かったとしても、何かを得て帰ります。

難しいのは、親から無理に参加させられた子。親としては「可愛い子には旅をさせよ。辛い時に乗り越えられる精神力を身につけさせたい。心配だけれど大きくなって帰っておいで!」という意気込みで参加させたのだと思いますが、残念なことに誰もがそう期待通りにはいかないのです。

もちろん、元気に登って楽しかったと言って帰る子もいます。危ういのは途中で疲れて弱音が出てきた子。そんな子は「なにくそ頑張るぞ!」とはならず、親に責任転嫁してネガティブ方向へ。どうしてこんなことをしなくちゃいけないんだ、お母さんが勝手に申し込んだからだ、自分は来たくなかったんだ、もう登りたくない、帰りたい、でもすでに引き返せない、でも辛い、しんどい。低学年だと泣きだす子もいます。

疲れて泣いているように見えますが、そこには親への怒りや憎しみが込められていて。腹立たしくてどうしようもないのにぶつける相手がいなくて涙が出てきている。酸素が薄いので、泣きじゃくると余計に息が吸えなくてしんどいのですけども。

それでもきっと親としては「それを乗り越えた後にこそ奮起してくれるはず!」というわずかな希望にすがりたいところでしょう。しかし大変残念なお知らせです、それは幻です。

標高はさらに上がっていくので空気は薄く辛さが続き、もうしんどくて何も考えられない、考えたくない、とにかく登って下りるしかないあきらめの境地。思考停止。感情なし。

頂上に着いても、登頂できた!やった!という達成感はなく、やっと頂上についた。。折り返して帰れる。。というほんの僅かな安堵感と、またあの長い道のりを戻るのかという絶望感。下山中にそこそこ元気を取り戻しますが、下山してどうだった?楽しかった?と聞いても「別に・・」なんて、どこかの記者会見で見たわ!というような答え。よくあるリアル回答なんです。

終わってみれば辛かったけどいい経験だったね、なんて大人たちは簡単にまとめますが、大人がそう思いたいだけで、小学生はそんな感想もってません。大きな感慨もなくゲームやテレビの日常に戻っていきます。

これが逆に、自分が登りたくて参加している子だと意地があります。弱音を吐いたり、高山症状で気分が悪くなる子もいますが、ギリギリのところで「どうする?ここでやめる?(やめさせるつもりは全くない)」と聞くと、疲れて声が出なくてもイヤイヤと首を振ります。途中で吐きながらでも、登りたい子は登るのです。これには私も驚きました。みんなに遅れながらも、吐いて多少スッキリしてまた登るをゆっくり繰り返し、登頂した時はこれこそ全ての親が望む涙の感動シーン、下山した後の晴れやかな顔のまぶしいこと。

もちろん嫌々ながら登った子でも、感動したり強くなったり、何かしらいい影響はあると思います。でもやっぱり本人が登りたくて登った子との成長の差は大きいだろうなあと感じます。

ちなみに。最初から嫌々登ってる子には、行くかやめるかはフェイクでも絶対に聞かないようにしていました。聞いたら絶対「やめる」と言いそうな、まだ体力は残ってるのに心が折れてるだけの子もいるんです。この時ばかりは同調圧力を利用して、みんな平気で登ってるじゃん、当然行くでしょ登るでしょというオーラ全開で対応です。

親も子供も100%本気になれれば成功

子供の富士登山の成功とは「登頂」ではないように思います。いくら登頂できても、嫌々登っている子にはあまり意味なし。それよりも、本人が富士山に登頂したい!と心から本気で思えるかどうか。その状態に持っていければ、登頂できてもできなくても大成功なのではないかと。

つべこべ言わず参加しなさいと無理に登らせるのではなく、例えばロープウェイでもいいので標高の高い山や富士山の見える山に登ったりして、小学生でも富士山に登ってる子がいるんだってよ、なんてじわじわと、本人が登りたいと言い出すように作戦を練る。そして親も一緒に行くのなら、絶対にあきらめない覚悟で100%の全力をみせる。

親も子供も100%マジ本気です、となることができれば、登る前から成功は決まっていると思います。お父さんお母さんの健闘を祈ります!

(編集部:屋久島りかこ)