最近では登山の際にヘルメットを着用している人をよくみかけるようになった。そのため「普通の登山でも必要なのかな?」と心配になり、自分も買った方がいいのか、どうしたらいいのか不安に思っている人も少なくないはずだ。ヘルメットはどんな時に必要なのか、買うとしたらいつなのか、判断のポイントを考えてみよう。
ヘルメットはどんな場面で必要なのか
シンプルに「頭を守る道具」、それがヘルメット。例えば登山中に以下のような場面で、衝撃から頭を守ってくれる。
- 上からの落石
- 転んだ時、滑落した時に頭を打つ
- 歩行中に岩のでっぱりや木で頭を打つ
ということは、このような状況が発生する可能性が高いところでは、ヘルメットの着用が望ましい、ということになる。岩場、ガレ場、崖のような登山道がある山は危険性が増す。また、自分の不注意が起因する場合だけでなく、落石のように外的要因の場合もあることを覚えておきたい。
ヘルメットを買うのをためらう理由
転倒や、岩や木で頭を打つ可能性は、どんな登山道でもありえる。それならば即ヘルメットが必要!ともいえるが、購入する決心がつかないのはなぜだろうか。恐らく理由はひとつではなく、いくつかがからみあった状態ではないかと思われる。
理由1:荷物が増えるし、できればかぶりたくない
ヘルメットはかさばる。持って行くにも荷物になるし、帽子とは違って重くて暑くて煩わしい気がする。できる限り身軽に歩きたい。
理由2:買ったとしても何回使うかわからない
ヘルメットが必要そうな山に行く計画はある。しかしそんな山に次はいつ行くかわからないし、もう二度と行かないかもしれないし、わからない。
理由3:お金も置いておく場所もない
使う頻度を考えると、ヘルメットに1万円前後のコストをかけるには迷いがある。家に置いておくにもちょっと邪魔なような気もする。
理由4:どれを買っていいかわからない
なんとなく調べてみたものの、たくさんありすぎてよくわからない。
ヘルメットの買い時はこんな時
登山靴やレインウェアと違って、ヘルメットを購入する優先順位は低いものだ。自分のタイミングで購入するしかない。もしずっと迷っているようなら、ひとまず「ヘルメット着用が推奨されている山へ行く時に買う」と決めてみてはどうだろう。
2013年から長野県では、滑落や転倒の多い山域を指定してヘルメット着用を推奨している。あくまで長野県内の話で、他府県で公的に指定はされていなくても、剱岳(富山県)などヘルメット着用の登山者が多い山もある。これらの山に行く計画を立てるなら、同時にヘルメット購入も準備計画の中に入れてしまうのだ。
<山岳ヘルメット着用奨励山域>
山域 | 指定エリア |
北アルプス南部 | 槍・穂高連峰のうち、北穂高岳から涸沢岳・屏風岩、前穂高岳(北尾根から吊尾根)一帯、西穂高岳から奥穂高岳、北穂高岳から南岳(大キレット)、北鎌尾根・東鎌尾根の区域 |
北アルプス北部 | 不帰の嶮周辺、八峰キレット周辺 |
南アルプス | 甲斐駒ケ岳、鋸岳 |
中央アルプス | 宝剣岳 |
戸隠連峰 | 戸隠山、西岳 |
このエリア外の山で、ヘルメットがあった方がよいかどうか調べる場合は、Google検索で山の名前を入れて「画像検索」を確認すれば、山頂や登山道の写真からヘルメット着用の様子がわかることもある。本やネット検索のほか、行ったことのある人や宿泊する山小屋などに聞いてみる方法もある。
但し、前述の長野県の例でも「着用奨励」であって義務ではない。どこに聞いたとしても絶対的な正解はなく、 自己責任で、と言われるのがオチだろう。そのつもりでしっかり調べて、自分で判断をしなければいけない。
そもそも、初めての岩稜で、そのような問合せをするくらい不安で経験者もいないのであれば、個人で行くのではなく、まずはガイドツアーを利用しよう。ガイドさんと一緒に歩くことで、ヘルメットの件以外にも、得るものはたくさんある。
ヘルメットを買わないという選択
例えば「憧れの剱岳には行きたい、でもそんな山登りばかりをしたいわけではない」という場合。先に述べた、買うのをためらう理由2と3は、実は多いと思う。買ったところで年に何回使うのか、と考えると決心がつかないのだ。そんな時の代替案としては以下のような方法がある。
自転車用など持っているヘルメットを使う
登山で想定される事故と、自転車やバイクで走行中の事故では、保護すべき部分や求められる強度が異なる。また、着用して使う時間や、着用中の動きも違うことから、やはり登山には登山用のヘルメットを推奨したい。しかし「登山用でなければならない」という規則はないため、もし買わないのであれば、自転車用ヘルメットでも持参して使ってみよう。ないよりはある方がいいのは間違いないのだから。
レンタルを利用する
2回、3回と使うようなら、買っておけば良かったとなるかもしれないが、必要な時だけと最初から割り切るならレンタルが便利だ。
山小屋でレンタルしている場合もあるので、問合せてみよう。現地で借りて返せるので、家から持って行く必要がなく移動の際も楽だ。在庫数や予約可否については必ず確認が必要だ。
また、貸出・返却ともに宅配便でOKの登山道具のレンタルサービスもあり、これなら日本全国どこの山に行く場合でも利用できる。
◆やまどうぐレンタル屋(ヘルメット1泊2日 税込2,500円)
その他、無料レンタルが含まれているガイドツアーもあるので、ちょうど行きたい山のツアーがあれば、トータルでお得かもしれない。
具体的な山の計画がなければ買う必要はない
いつか岩場のある山に行くかもしれないし、、という漠然とした不安だけなら、急いでヘルメットを購入する必要はない。目標とする山と時期が決まってないうちは、選ぶ時にもイメージがわきにくいし、1年後、2年後になる可能性もある。
「この山にいつ行く」、と具体的に決めてから探す方が、最新のラインナップから選べるので、機能的にも良いものを手に入れることができる。
ヘルメットはあくまで保険である
ヘルメットは事前に事故を防いでくれるものではなく、何かが起こった時に役に立つ保険と同じようなものだ。何もなければ、何もない。保険で数百円の掛け捨てに加入する人もいれば、特約をたくさんつけて何万円も払う人がいるのと同じように、手持ちの自転車用ヘルメットでよしとする人もいれば、素材や造りにこだわって購入する人もいる。
全てのリスクを考えるなら、低山でもハイキングでも常にヘルメットをかぶっていた方が良いことになるし、極端にいえば山に行かない方が良い、ということになってしまう。ヘルメットをかぶるのかどうかも、どんなヘルメットを選ぶのかも、結局は個人の価値観によるものとなるのだ。
一度自分でじっくり考えて納得のいく結論にたどりつければ、それが何だったとしても、今ある漠然とした不安からは一歩進むことができるだろう。