映画監督 片山修さん|『岳‐ガク‐』を撮るなら、穂高に行かなきゃと

片山修さん 山歩のひと
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フリーペーパー『山歩みち』2011年春 004号掲載

※この記事はフリーペーパー『山歩みち』に掲載されたものに一部加筆、修正を加えたものです。基本的には取材時の内容となっておりますので予めご了承ください。

Profile ※2011年時点
かたやま・おさむ 主な演出作品(テレビドラマ)として、「バーテンダー」(11年)、「パズル」(08年)、「花より男子」「タイガー&ドラゴン」(05年)、「木更津キャッツアイ」(02年)など。07年「ヒートアイランド」で映画初監督。「岳–ガク–」は第二作目となる。

北アルプスを舞台に、山岳救助ボランティア・島崎三歩と山を愛する人々が繰り広げる感動の物語を描く、人気まんが『岳 みんなの山』。その実写映画が、この春公開される。今回は映画『岳 –ガク–』を監督した〝三歩を撮った山歩のひと〞片山 修氏に話を聞く。これまでほとんど山を登ったことがなかったという片山氏の目に山々の姿はどのように映ったのだろうか――。

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原作に心を打たれて何度も泣いた

――もともと山登りはされていたんですか?

片山さん(以下、片山):いえ、まったく(笑)。(『山歩みち』3号を見ながら)ここに載ってる筑波山ぐらいです。

――登山レベルとしては、『山歩みち』読者と同じですね(笑)。

片山:ええ、そう思います。

――そんな〝登山初心者〞の片山さんが、なぜ山岳まんがである『岳』を撮ることになったのですか?

片山:プロデューサーから映画化の話をもらい、それから原作を読んだんですけど、感動しっぱなしで何度も泣いてしまいまして。人の命が失われるときの儚さと、でもその命を必死に助けようとする人々の姿に、ただただ心を打たれてしまったんです。それと、『岳』を読んで、事故に遭われた方はもちろん、まわりにいた方や救助に携わった方が現場でどういう闘いをしてきたかということが、わかった気がしたんです。そんなことが僕を『岳』にのめりこませ、ぜひ監督をしたいと思うようになったんです。

撮影は〝本物〞を撮ることにこだわった
撮影は〝本物〞を撮ることにこだわった

――ロケにはかなりこだわったそうですね。

片山:今の映像技術なら、スタジオにグリーンバックをつけてCGで、という方法もできます。でも、原作に強く心を動かされたこともあり、「何よりもまず三歩がいる穂高に行かなきゃ」と。この映画を撮るなら、本物のところに行かなければいけないと思ったんです。

――原作がある映画の場合、観客は原作のイメージから映画を見ます。片山さんはまんが『岳』の世界観をどのように理解し、実写として表現しようとしたのですか?

片山:主人公・島崎三歩の描き方には気を遣いました。まんがの三歩って、スーパーマンじゃないですか。どんな過酷な場所でも強く、頼りになって、的確な判断を下してくれる。でも、スーパーマンが活躍するエピソードを並べてもドラマは作れない。ですから、物語を作る際は、まったく山経験がない新米救助隊員の久美ちゃんや山で父親を失ったナオタが葛藤して成長していく過程に、三歩がどう関わっていくかということを柱にしました。そこにドラマが生まれるんじゃないかと考えたんです。また、三歩役の小栗君には「一度原作の世界観を頭から捨ててくれ」と言ったんです。

島崎三歩役の小栗 旬さんへの演出にも熱が入る
島崎三歩役の小栗 旬さんへの演出にも熱が入る

――それはなぜ?

片山:映画化するからには、原作とは違った、映画『岳 –ガク–』の魅力をお客さんに伝えたいと思ったんです。そのためには、原作の三歩とは違う、〝小栗三歩〞が出てこなきゃいけないと。原作通りの映画を期待している人が見れば「ここが違う」「あそこが違う」ってなるかもしれないけど、でも見終わったあとに「よかったね」と喜んでもらえるような映画にしようって小栗君とは話しました。

――具体的に〝小栗三歩〞とは?

片山:スーパーマンじゃなく、より生身の人間っぽくしようと。迷うこともあれば、雪崩に遭って「助からないかも!?」と思わせたりもする。そこが原作といちばん違う点かな。

ヒロイン・椎名久美役の長澤まさみさんと片山監督
ヒロイン・椎名久美役の長澤まさみさんと片山監督

街じゃ絶対に味わえない山での開放感、達成感

――雪の奥穂高岳に登頂するなど、この映画のロケを通じて多くの山と出会い、いろいろなご経験をされたと思います。片山さんの目から見て、山の魅力ってなんでしょう?

片山:まず単純に、頂上から眺める景色がきれい、ということがありますね。当たり前といえば当たり前ですが、でも想像していたより何倍もすごかったんです。あれほど遠くまで景色が見わたせるとは思わなかったし、空が晴れていることがこんなにも気持ちいいものかって。視界をさえぎるものがまわりに何もないっていう、あの開放感は、街じゃ絶対に味わえないですよ。それと、やはり達成感かな。ただ頂上に立つだけなら、ヘリで連れて行ってもらうのが早いし、ラクですよ。でも、それじゃ頂上に立っても何もないわけで。荷物が重いとか、歩く距離が長いとか、登りが苦しいとか、そういうことを乗り越えて山頂にたどり着いたときというのが、たまらなく感動して、頂上で見る景色もすばらしいものになるんじゃないでしょうか。

――撮影後、プライベートで山に登ったりはしたんですか?

片山:スタッフと「また涸沢に行きたいね」とは言っているんですよ。それと北穂にもぜひ登ってみたいですね。

――北穂の小屋のテラスで飲む生ビールは最高ですよ。

片山:って聞いているので、ぜひ行きたいなって(笑)。

――山を愛し、山を登る人々の映画を撮ることで、片山さんもこっちの世界に入ってきてしまったようですね(笑)。

片山:そうかもしれません(笑)。今度はうちの子どもも連れて登りたいと思ってます。

片山修さん
片山修さん

『岳 –ガク–』 2011年5月7日(土)~全国公開 ※終了
出演:小栗 旬、長澤まさみ  監督:片山 修 原作:石塚真一『岳』 配給:東宝
©2011「岳–ガク–」制作委員会 ©2005 石塚真一/小学館

写真=加戸昭太郎

参考)映像・原作

『岳 –ガク–』

メインキャストが小栗旬さんと長澤まさみさんということで、登山をしない方々にも話題になった映画ではないでしょうか。原作の漫画の人気があった上に、山ガールが涸沢へ穂高へと進出しているブームの中での公開。若者向けのライトな映画かと思いきや、実は結構ハードで非情なシーンもありますのでご注意を!漫画の岳はもっとそんな描写が多いので、そこまでは、、という方は映画の方がおすすめです。

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今はDVDを購入しなくても月定額で見放題の動画配信サービスが一般的になってきています。雨で山に行けない日にガッカリしなくとも、山の映画を観る!という過ごし方ができるのが楽しいところ。しかし各サービスでラインナップは異なり、山の映画となるとさらに少ないので、山の映画メインで利用するのはどれもおすすめできません。

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