テーピングとファーストエイドセット、大事だとはわかっていても、あまり使う機会がないのでとりあえず持っているだけになっていませんか。当社で企画・実施している登山ツアー「yamakara」の日帰り講習5回シリーズの第2回「テーピング&ファーストエイド」を取材してきました。
長く(N) 楽しく(T) 安全に(A)!NTAレッスン
- 1回目:疲れにくい歩き方&ダブルストックの使い方
- 2回目:テーピング&ファーストエイド ←今回はこれ!
- 3回目:はじめての地図読み
- 4回目:かんたんロープワーク&ツェルトの張り方
- 5回目:鎖場通過と三点支持
第2回の開催場所は「青梅丘陵」
テーピングやファーストエイドの机上講習はよく開催されているのを見かけますが、今回は講師である楠元さんの希望で敢えての屋外講習。山で起こることは山でやってみることが大事とのこと。JR青梅駅北側に広がる青梅丘陵ハイキングコースは随所にベンチや東屋があるので落ち着いて講習でき、スニーカーでもOKの快適なコースでした。
前回の疲れない歩き方を復習
復習として、第1回で学んだ「疲れない歩き方」を改めてやってみます。その中で、前回は人よりもギクシャクしていたのに、明らかに今日は骨盤がしっかり動いている方を発見!聞いてみたところ、前回講習の最後に簡単なトレーニングとして教えてもらったおしり歩きをやってみたら、なんとなく骨盤の動かし方がわかってきたとのこと(前回の記事にのっています)。地味で簡単なトレーニングでも、確実に効果が現れています。
まずはお悩み第一位「膝のテーピング」
多くの人が抱える不安が膝の痛み。テーピングには伸縮性があるものとないものがあり、膝の痛みが出ないように予防するには、伸縮性のあるキネシオテープ。柔らかそうな肌色のテーピング、見たことがあるでしょうか。
サポーターの方が手軽ですが、どうしてもズレる問題があります。キネシオテープは筋肉が正しい位置を保つようにサポートしつつ、動きに連動して伸び縮みをしてくれるのでズレることのない、いわばオーダーメイドのサポーター。覚えてしまえば無敵です。
膝の下からお皿のまわりを囲むようにクロスして太もも前面に貼るのですが、ここで楠元さんがちょっとしたコツを伝授。20~30cmくらいにあらかじめカットするのですが、動いているうちに角からはがれてくるので、角を丸く切り落としておくこと。これだけで格段にはがれにくくなり、フィットしてくれるそうです。角をカットしてあるものも売ってあるとのこと。でもちょっと高いと。人間というものはどれだけ怠惰なんでしょう。
また、テーピングの張り具合も、まず一旦引っ張ってから三分の一戻す、という微妙な力加減を実演。目の前で実際に見せてもらえると、なるほど、なんとなくそのくらいね、と記憶に残ります。膝のほかに、足首の捻挫予防のテーピングも教えてもらいました。
登山中に起こりやすい「捻挫した時のテーピング」
次に、いざ捻挫してしまった場合。固定が必要なので伸縮しないホワイトテープを使用。テーピングといえば靴下を脱いで肌に直接しっかり巻くもの、というイメージがありますが、必ずしもそうではないという話に、皆さんえっ?と驚き。
靴を脱いで巻くと、腫れてきてしまった場合には靴が入らなくなることがあります。家や宿に着いた後ならもちろん靴は脱ぐのですが、例えば残りの距離を自力で降りなければならない行動中は、靴の上から固定するのだそうです。
また、その補助としてストック二本で松葉づえを作る方法も教えてもらいました。普通にストックでも支えにはなりますが、痛みで辛い時にグリップを握りしめて歩くのは非常に体力を消耗します。簡易とはいえ、松葉づえにして脇で身体を支えられるのは、手でストックを持つより体重を預けられるので、そのぶん楽だと感じました。
人を背負って下ろすのは男性でも複数人いないとかなり難しい。救助を呼ぶのに何時間もかかるリスクがあるならば、状況によっては多少無理してでも下山する方がリスクは低い、という選択になる場合もあります。 自力下山するためのあらゆる手段を知っておくのは大事なことだと思いました。
転んですりむいた!骨折したかも!そんな時
登山中の事例としては、転倒して手や足をすりむいたり、手をついた時に手首を骨折、というパターンが多いそうです。
先ほどの捻挫した時も同様ですが、応急処置をする前に忘れてはいけないのが安全確保。本人も同行者もケガに気をとられて周囲が見えなくなります。まずは少しでも広く安定した場所に移動して落ち着くことがとても重要です。そして血が出ている場合、対応者はまず手袋をすること。薬やパッドなどを当てる前に真水で洗うこと。感染を防ぎます。
ファーストエイドというと持ち物や使い方にばかり気がいきがちですが、それよりも対応するにあたっての客観的な視点を教えてもらえることは、講習に出る意義として大きいと思いました。
ここで皆さんがまたまた驚いたのは、紙パックとコンビニ袋で作るギブスと三角巾。どちらもかさばらないので、常にザックのポケットに入れておくことが可能。これだけでも十分に役目を果たしてくれるのですが、服の上からテーピングでぐるぐる巻くことでさらに固定力アップ。「おお~」という声もあがる裏ワザでした。
虫刺され、低体温症、熱中症など多種多様
ケガ以外のよくある事例と、その対応アイテムとして以下のようなものを教えてもらいました。
- 虫刺され→ポイズンリムーバー
- 低体温症→レスキューシートやツェルト
- 熱中症→経口補水パウダー
それぞれの使い方や細かな対処法についてもレクチャーがありましたが、とてもここでは書ききれないほど盛りだくさんなので、また別の機会でご紹介したいと思います。その他に参加者からのリクエストで、「足裏が痛くなる」「ふくらはぎがつる」などの予防テーピングも教えてもらいました。
登山で起こり得るケガや症状は、他の運動に比べて非常に幅が広いということに気づかされます。滑落や遭難などニュースになるようなものとはまた別で、こういった小さなトラブルがいつどこで起こってもおかしくないのが登山なのですね。
いざという時に大切なのは冷静さ
以前に社員研修として、山中でのトラブル対応研修をしたことを思い出しました。スタッフ側とお客さん側に分かれて、いつどこで何が起こるかは知らせず、実際にツアー行程を歩きながら発生した事態に対応するというもの。しかも熊野古道で。
仕掛け人は、どのあたりで何をするという設定を事前に決めておきます。それも滑落などではなく、恐らく教科書には出てこないけど現場ではよく起こっていること。足が何度もつって遅れて歩けなくなる、バテてしまって自分だけ戻りたいと言い出すなど、目に見える手当だけでは解決できないような心理的な問題も絡めたり、転倒による出血では血のりまで使って準備し、とにかく緊張感のある研修でした。今思い出してもドキドキします。
実はその時に終わってみて何より大事だと思ったのは、処置の方法はもちろんですが、冷静さとコミュニケーションでした。
何かが起こったら、まず荷物を下ろして座れる場所を探す、グループなら全員を安全な場所に移動させる、どこが痛いか、どんな症状かを細かく聞き出す、残りの距離と時間やルートの難易度を考える、他のメンバーと協力する、精神的なケアをする、などなど、冷静に頭をフル回転させて判断しなければいけません。しかも時間をかけずに。
今回はフィールドでの研修だったことで、そこまではなくとも、机上講習では感じられないリアルさを参加者の皆さんも少しは体感できたのではないでしょうか。
まとめ:ぜひ屋外で一度試してみよう
外で実際にやってみるだけで、これが足場の悪い場所だったら、暗かったら、大雨だったら、残りの行程がまだまだ長かったら、などの状況を想像してきっと恐ろしくなると思います。
そして応急処置とはあくまで無事に下山するための一時的な処置である、ということも理解。手早さも重要で、処置に時間がかかると下山遅れなど同行者も含めて別のリスクが高まります。
予防と処置の方法を身につけておくこと、そして現場では冷静であること。この両方を備えられれば完璧ではないでしょうか。仲間と日帰り登山の機会に、一度「ファーストエイド山行」をしてみることを強くおすすめいたします。次回の「はじめての地図読み」も楽しみです!。
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